自然栽培農法の世界
自然栽培農法って?
自然栽培農法(無施肥・無農薬栽培)とは、化学肥料や農薬はもちろん、有機肥料や堆肥さえも施さず、自然のままの土壌と水だけで栽培する方法です。
土と作物が本来持っている力を引き出して、栽培します。
「ほったらかし」にするの?
決して放っておくのではありません。作物の成長の過程によって、中耕や草取りなど、必要な時にお手伝いをしてあげます。
たくましい子に育てるには、過保護に育てるのではなく、親が見守り、必要なときに手を差し伸べるー子育てと似ています。愛情いっぱいの農法ですね。
自然栽培農法で育てたら、どんなお米になるの?
自然の力だけで育つから
自然栽培農法のお米は、大変厳しい環境で生き抜いた稲が実らせたお米です。
お米本来の味で育つので、味や香りにクセがありません。お米だけでも、十分美味しくお召し上がりいただけます。また、病虫害・風水害に強いこと、保存性がよくなることなどがあります。
玄米一粒一粒しっかりと充実しており、外観品質のみならず栄養価もほとんどの項目で大変充実しています。
自然栽培玄米 | 有機栽培玄米 | 一般玄米 | |
---|---|---|---|
Ca(カルシウム) | 10.422 | 8.374 | 7.000 |
K(カリウム) | 386.870 | 291.057 | 95.000 |
Mg(マグネシウム) | 178.195 | 154.472 | 49.000 |
Na(ナトリウム) | 1.501 | 1.130 | 1.000 |
P(リン) | 472.450 | 395.122 | 130.000 |
Fe(鉄) | 0.481 | 0.677 | 0.600 |
Mn(マンガン) | 5.487 | 3.024 | 1.040 |
Mo(モリブデン) | 0.188 | 0.171 | – |
Si(ケイ素) | 3.623 | 1.008 | – |
Zn(亜鉛) | 4.138 | 2.837 | 0.800 |
(試料は、中道農園生産自然栽培並びに有機栽培コシヒカリ玄米
一般玄米は、日本食品標準成分表より)
自然栽培米は、有機栽培米や一般玄米に比べ、ミネラル分(Feを除く)が上回っています。
自然栽培米の美味しさは?
自然栽培のお米は、たんぱくでインパクトの少ない食味になり、現代人には有機栽培米の方が、甘みや香り粘りがあり美味しく感じるようです。なぜなんでしょうね?
人間は本来、身体に必要な物を美味しく感じるように育ってきました。しかし、イノシシの肉より家畜化した黒豚の方が美味しいと感じるように、私たちは美味しさを追求した結果、今の有機米を造り上げて来たのかもしれません。
ただ、アトピーなどで身体の異常を訴えるお客様には、圧倒的に自然栽培の方が美味しいと言われるのも事実で、人の感覚は不思議ですね。
除草剤使用時・有機栽培・自然栽培の比較
除草剤使用時の肥料投入量と収量の変化
この田んぼの場合、8年間で各年に投入した肥料の量は、大きな変化はありませんでした。
これは有機肥料を与えている場合も化学肥料を与えている場合も同じ結果となりました。
一般的には化学肥料で栽培した場合は土が痩せ、有機肥料で栽培した場合は、土が育ち肥えてくると言われています。それならば、なぜこの様な結果になったのか!?
これは有機肥料を与えていても除草剤を使っていれば、その影響で土が育たないと言えると考えられます。
※平成5年、悪天候が続き大凶作となった年は、化学肥料を与えた場合より有機肥料を与えた場合のほうが減収度合いが少なくて済んだという結果が出ました。
これは有機肥料を与えた場合のほうが天候の変化に強いということが言えると思われます。
Memo:8年間肥料を投入しても、有機肥料でも化学肥料でもどちらも土は育たなかったと考えられる。
このことから、農薬など化学的資材を使用した場合は有機肥料でも、化学肥料土がリセットされている。
有機栽培の肥料投入量と収量の変化
グラフ1との違いは、有機肥料100%で化学的資材(化学肥料、農薬など)を一切使わない点です。農薬を使用しない場合では有機肥料の投入量は年々少しずつですが減少傾向にあります。
一方、収量は年によってある程度のばらつきがあります。
このことから、投入される肥料の量と収量の関係は全く無いように思われます。
収量のばらつきの原因としては天候や栽培管理による影響だと思われます。
有機栽培から無施肥・無農薬栽培(自然農法)の収量の変化
この田んぼでは、平成16年から平成18年まで、あいがも農法を行い、有機肥料のみで化学肥料は一切使わずに栽培しました。
平成19年からは、化学肥料はもちろん有機肥料も与えない無施肥無農薬栽培(自然農法)にしました。
予測通り、肥料を与えなくなってからは年々収量が減少してきました。
ところが、平成22年には肥料を一切与えていないにも拘わらず10アール(1,000平米)当たり360kgのお米が収穫でき、品質も素晴らしいものでした。
これはどうしてか!?
考えてみると、土の中の生き物(微生物)が活性化することによって田んぼの中の生態系が構築され、人為的に肥料を与えなくても、お米が成長する環境が整ったということが言えます。
化学資材を一切使わないで7年目、完全に無施肥無農薬栽培(自然農法)に切り替えて4年目、「土、本来の力」を引き出すことができた結果が表われたと考えられます。