有機農業推進法とは
有機農業推進法成立の背景とこれから
2006年12月8日、「有機農業推進法」案が成立。12月15日に施行されました。
農民牽引型の法律
この法律により、国や行政は「有機農業」を進めるために、我々農民に協力しなければいけないことになりました。農民牽引型です。
いままでさんざん有機農業の邪魔をしてきた国をみれば、我々にとって夢のような法律です。
今回の出来事は、「当たり前に安全な農産物を食する権利」を一般消費者「国民」は、やっと手にしたことになるのです。
技術公開の壁を乗り越えて
今まで有機農業が普及しなかったもう一つの理由に「技術公開の壁」がありました。
早くから高度な有機農業技術は、全国に点在していたのですが、農家としては、「自らの骨身を削って築き上げた高度な技術」を簡単に公開することができなかったのです。
しかし、これではいけないと気づいた先輩先生方が、さかのぼること30年、全国の先進技術をもつ有機農家を一軒一軒周り、技術の公開と、田畑の学術調査の協力を申し出たのです。
また、新たに賛同する志高い農家がさらに技術を磨き上げてこられました。
この地道な積み重ねが今回の「有機農業推進法」を成立させたのですね。
これからの取り組み
「有機農業推進法」を成立させた土台のひとつとなる高度な技術を、手際よく一般農業に普及させ有機農業の恩恵が農民のみならず、一般国民にいき渡るよう努力しなければいけないと考えています。
滋賀県野洲市では平成19年「環境条例」が策定され、有機農業の重要性を認識、これを具体的に進めるための、農民の自主的な有機農業の技術交換学習会を開始し、環境と農民の健康に配慮し、かつ消費者に自信を持ってアピールできる「より安全でよりおいしい」農産物の生産に取組む計画が進んでいます。
全国でこのような活動が広がることを切に願っています。
有機農民が主導権を確保
有機農業は、我々農民の先輩や先生方の永年に渡る血のにじむような努力の結晶であり、現場で日々努力する農民の技術です。
僕は現場で努力する農民とそれを食する国民のための権限を持ち続けなければいけないと強く思っています。
現代に生きる私たちは、農業に限らず先人たちの努力を認識し、かつ、未来のこどもたちにツケを回すことのないよう、今できることを積み重ねなければいけないと僕は決意しています。
「有機農業の推進に関する法律」全文
(目的)
第一条
この法律は、有機農業の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、有機農業の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、有機農業の推進に関する施策を総合的に講じ、もって有機農業の発展を図ることを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「有機農業」とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。
(基本理念)
第三条
有機農業の推進は、農業の持続的な発展及び環境と調和のとれた農業生産の確保が重要であり、有機農業が農業の自然循環機能(農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能をいう。)を大きく増進し、かつ、農業生産に由来する環境への負荷を低減するものであることにかんがみ、農業者が容易にこれに従事することができるようにすることを旨として、行われなければならない。
有機農業の推進は、消費者の食料に対する需要が高度化し、かつ、多様化する中で、消費者の安全かつ良質な農産物に対する需要が増大していることを踏まえ、有機農業がこのような需要に対応した農産物の供給に資するものであることにかんがみ、農業者その他の関係者が積極的に有機農業により生産される農産物の生産、流通又は販売に取り組むことができるようにするとともに、消費者が容易に有機農業により生産される農産物を入手できるようにすることを旨として、行われなければならない。
有機農業の推進は、消費者の有機農業及び有機農業により生産される農産物に対する理解の増進が重要であることにかんがみ、有機農業を行う農業者(以下「有機農業者」という。)その他の関係者と消費者との連携の促進を図りながら行われなければならない。
有機農業の推進は、農業者その他の関係者の自主性を尊重しつつ、行われなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条
国及び地方公共団体は、前条に定める基本理念にのっとり、有機農業の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
国及び地方公共団体は、農業者その他の関係者及び消費者の協力を得つつ有機農業を推進するものとする。
(法制上の措置等)
第五条
政府は、有機農業の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(基本方針)
第六条
農林水産大臣は、有機農業の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。
基本方針においては、次の事項を定めるものとする。
- 有機農業の推進に関する基本的な事項
- 有機農業の推進及び普及の目標に関する事項
- 有機農業の推進に関する施策に関する事項
- その他有機農業の推進に関し必要な事項
農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議するとともに、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。
農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(推進計画)
第七条
都道府県は、基本方針に即し、有機農業の推進に関する施策についての計画(次項において「推進計画」という。)を定めるよう努めなければならない。
都道府県は、推進計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(有機農業者等の支援)
第八条
国及び地方公共団体は、有機農業者及び有機農業を行おうとする者の支援のために必要な施策を講ずるものとする。
(技術開発等の促進)
第九条
国及び地方公共団体は、有機農業に関する技術の研究開発及びその成果の普及を促進するため、研究施設の整備、研究開発の成果に関する普及指導及び情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(消費者の理解と関心の増進)
第十条
国及び地方公共団体は、有機農業に関する知識の普及及び啓発のための広報活動その他の消費者の有機農業に対する理解と関心を深めるために必要な施策を講ずるものとする。
(有機農業者と消費者の相互理解の増進)
第十一条
国及び地方公共団体は、有機農業者と消費者の相互理解の増進のため、有機農業者と消費者との交流の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。
(調査の実施)
第十二条
国及び地方公共団体は、有機農業の推進に関し必要な調査を実施するものとする。
(国及び地方公共団体以外の者が行う有機農業の推進のための活動の支援)
第十三条
国及び地方公共団体は、国及び地方公共団体以外の者が行う有機農業の推進のための活動の支援のために必要な施策を講ずるものとする。
(国の地方公共団体に対する援助)
第十四条
国は、地方公共団体が行う有機農業の推進に関する施策に関し、必要な指導、助言その他の援助をすることができる。
(有機農業者等の意見の反映)
第十五条
国及び地方公共団体は、有機農業の推進に関する施策の策定に当たっては、有機農業者その他の関係者及び消費者に対する当該施策について意見を述べる機会の付与その他当該施策にこれらの者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
附則
(施行期日)
1.この法律は、公布の日から施行する。
(食料・農業・農村基本法の一部改正)
2.食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)の一部を次のように改正する。
第四十条第三項中「及び食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成十二年法律第百十六号)」を「、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成十二年法律第百十六号)及び有機農業の推進に関する法律(平十八年法律第百十二号)」に改める。
(農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部改正)
3.農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律(平成十八年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
附則第九条中第四十条第三項の改正規定を次のように改める。
第四十条第三項中「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成十二年法律第百十六号)」の下に「、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律(平成十八年法律第八十八号)」を加える。